高校と地域の連携・協働を推進する「コンソーシアム」の設立を急ぐ必要性

著者
大正大学地域構想研究所 教授
浦崎太郎

昨今、高校と地域の連携・協働が急速にクローズアップされている。5月23日に公表された「第2期『まち・ひと・しごと創生総合戦略』策定に関する有識者会議中間取りまとめ」や、6月21日に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生基本方針2019」や「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太の方針)に「高校と地域の協働」「コンソーシアム設立」「地方の魅力ある高校への留学」「教育の情報化による個別最適化された学び」が明記される等、地域との連携による高校改革に対する国の優先順位が大きく上がっているのだ。「地域との関わりを深めた生徒は、大学進学で一度は地元を離れても、帰ってきてくれる手応えを持てた」等の成果が国を動かした形だが、根底にあるのはインターネット社会やAI時代への対応だ。

かつて工業社会の時代には、規格品の大量生産に役立つ「指示されたことを速く正確にこなす」人材が求められた。ところが、インターネット社会の登場により、知識は瞬く間に賞味期限を迎えるようになり、代わって「新しい知恵を生み出す力‥三人寄れば文殊の知恵」が求められるようになった。その際、似通った三人から浮かぶ知恵は知れており、お互い別々の方向に突き抜けていた方がよい。それには、各生徒が「これだ!」と感じて夢中になれるテーマと丁寧にマッチングする方がよい。全員一律の内容を教えるよりも、生徒一人ひとりの興味関心や適性に応じて「学びを公正に個別最適化」することが求められる訳だ。もちろん、それを学校の力だけで実現するのは難しく、地域がもつ多様性や現場性に頼らざるをえない。

そこで必要となるのが、高校と地域の多様な主体(市町村・大学・産業界・小中学校・社会教育期間・市民団体等)が連携し、高校生の興味関心と地域の課題やフィールドとを丁寧にマッチングするための組織(コンソーシアム)だ。その設立や運営にむけて、ぜひ主体性を発揮してほしいのは自治体や大学だ。残念ながら、教育委員会や高校には、地域で影響力やネットワークを十分に持っていないところが大半だからだ。

そして、コンソーシアムの設立は早めの着手が求められる。それは「地方の魅力ある高校への地域外留学」が上記文書に明記され、コンソーシアムが機能して「公正に個別最適化された学び」を提供できるようになった高校はブランドが高まって入学者が増加し、乗り遅れた高校は減少すると考えられるからだ。当然それは、先手が奏功して若年人口が外部から流入してくるか、後手に回って外部へ流出していくかの差を生み、自治体の命運を分ける場合さえあるだろう。そのため、できうる限り、高校との連携や協働を来年度の事業や予算に位置づけることが求められる。

なお、高校も自治体も連携を円滑にすすめるための知見やノウハウを十分に持ち合わせていない場合が多いであろうことから、学校と地域の双方にむけて要点を簡潔にまとめた基礎資料(↓)が文部科学省のホームページに公開されている。ご参照をいただけると幸いである。

【参考資料】
地域との協働による高等学校教育改革推進事業の2019年度指定を踏まえた所見
https://bit.ly/2IAUyl1

2019.07.01