大正大学・地域創生学部の地方実習を振り返って

著者
地域構想研究所 助教
清水麻帆

大正大学・地域創生学部では、授業の一環として40日間、全国13か所で同時に地域実習が行われます。今回は、実習地の一つである奄美での1年生・男女8名の活動の様子をお伝えしつつ、実習の振り返りをしたいと思います。

実習から半年経ち2年生になった現在の学生の言葉からは、40日間大変だったが、時が経つにつれ奄美実習では充実した日々が送れたという声を聞きました。そうした彼らが今回学習したテーマは、「奄美の自然環境と維持可能な発展」でした。奄美は現在、世界自然遺産登録に向けて地域創生の契機を迎えています。そこで、奄美実習では、自然環境を活用した奄美の地域創生モデルを考えてもらうことにしました。実習のプログラムの内容は、土台となる座学を通して奄美の知見を広げ、実際の体験学習や地域の人々との交流を通して奄美への関心や現状の課題への理解をさらに深められるものになるよう努めました。

以下では、奄美での40日間、学生がどのように実習に取り組み、地域の人達と関わり、地域創生を考えたのか、そして、どのようなかたちで地域に貢献できるかを考え、取り組んできたのか、その様子をご報告します。

<座学>プログラムからの学び

学習プログラムを通して、学生は奄美の施策やデータなどの基本的な情報だけではなく、自治体の方々や地域の人びとの地域(自然環境)に対する思いを間近で感じながら、奄美で滞在しなければ学べない地域の現状や課題を学んできました。

その一部をご紹介します。まず、奄美市などをはじめとした各自治体での自然環境に関連する取り組みなどの基本的なレクチャーから始まり、奄美の自然概論や世界自然遺産概論、自然環境と文化的アイデンティティや観光との関係性、そして一連のレクチャーの最後には「自然環境からみた奄美の地域創生」をテーマとした公開レクチャーを行い、地元高校生や一般の方々に広く聴講してもらいました(写真①②を参照)。

写真① 龍郷町でのレクチャーの様子     

 写真① 龍郷町でのレクチャーの様子        写真② 奄美支局でのレクチャーの様子

 
公開レクチャーには50人以上の奄美の一般の人たちが参加し、学生を含めて活発な議論の場になりました(写真③を参照)。また、この場で発表した学生作成のポスターは、地元の人では気付かない視点からのものであり、地域の方々にはなかなかの高評価でした。そして、レクチャーの後には、参加していた地元高校生と大正大学生との交流会を大正大学・奄美支局で開きました。奄美には大学がないため、地元の子どもたちが大学生と交流する機会はめったにありません。そこで、実習中に大正大学生と奄美の子どもたちとの交流の場を何度か持ちました。その一つがこの交流会でした。この交流では、地元高校生が奄美の海が特段きれいだとは思っていないことに、学生は驚いていました。学生にとって、こうした交流による新たな「気づき」は、地域創生や地域の活性化を考える第一歩になったのではないかと思っています。


写真③ 小野寺浩先生の公開レクチャーの様子

 
今回の座学プログラムでは、現地での新鮮で詳細な内容のレクチャーを様々な分野の専門家の方々から受け、高校生をはじめとした地元の人たちとの交流を通して地域の方々の思いに触れたことは、学生にとって奄美の現状や課題により理解や関心を持つきっかけになったようでした。実際に、普段はおとなしい学生が活発にいくつも質問をし、自治体の方々やレクチャー陣と議論している姿は予想をしていなかったことであり、驚きつつもうれしく思った次第です。

<体験学習>プログラムからの学び

座学プログラムを通して、学生は奄美の自然環境の希少性や固有性を認識し、自然環境を活用した地域創生における自然環境保護の重要性と課題について学びました。それを体験するべく、様々なフィールド体験学習を行い、それにより学生の奄美への理解と関心がさらに深化したようです。

一部をご紹介しますと、まずは、奄美市が環境保全のために入場規制をしている亜熱帯の原生林が現存する金作原を訪問しました。奄美の本物の自然に触れながら、認定されたエコツアーガイドの方から希少種や固有種の植物や盗掘の問題などの説明を受け、熱心に聞き入っていました(写真④を参照)。他にも、元々マングローブ原生林があった場所にマングローブの植樹をしたり(写真⑤,⑥を参照)、アマミノクロウサギなどの希少動物の生息地にも訪問したりし、実際にそれらを見た際には学生たちは大変興奮していました。

 
写真⓸ 金作原でのエコツアー

 

     
   写真⑤ マングローブの植樹            写真⑥ マングローブの植樹

 
また、そうした希少動物を捕食する野良猫捕獲の現場への同行やマングース捕獲の実演鑑賞、環境省のレンジャーの方と共に世界自然遺産の候補地である湯湾岳のふもとで外来植物の駆除のお手伝いをしました(写真⑦を参照)。加えて、体験学習ではありませんが、滞在中に奄美で過去3本の指にはいるといわれる大型台風を経験し、地域特有の気候や風土に触れられたのも貴重な経験でした。
 


写真⑦ 湯湾岳ふもとでの外来植物駆除

 
次回は、こうした40日間の奄美での座学や体験学習、そして地域の方々との交流を通じて、学生が彼らなりに地域に貢献できることを考え、形にしていく様子と成果をお伝えします。

2019.05.10