2020年東京オリンピック・パラリンピックと「道の駅」

著者
大正大学地域構想研究所研究員
山本祐子

訪日旅行者による「道の駅」の認知度と利用率

訪日観光客は順調に増加しているが、地方への誘客拡大や滞在の満足度の向上が課題となっている。個人旅行化が進む中で、リピーターの増加に伴い増えているのが、レンタカーを利用した旅である。

日本人が車での遠出の際に、よく使う休憩施設にサービスエリア、「道の駅」、コンビニなどがある。中でも、「道の駅」は地域観光のゲートウェイとして、外部から訪れる客を歓迎している施設である。筆者が調査(2016年)を行った際にも、「道の駅」は車を使った移動に、利用率が高い施設であった。その知名度は9割で、非常に高かった。

日本人の「道の駅」利用率が高い理由に、トイレ休憩施設としての清潔感がある。また、地域の特色を活かした施設や販売商品、地域の伝統・文化関連のイベント開催が人気をよんでいる。こうした「道の駅」の事業・サービスは全国に広がり、「道の駅」の登録数は1,154箇所(2019年3月19日現在)となっている。

しかし、訪日観光客における「道の駅」の認知度や利用率が高くないのはなぜだろうか。観光庁が「道の駅」の認知度や利用率の調査(2018年)を行った。その結果、訪日外国人のレンタカー利用は12%(組数ベース)に増加しているにもかかわらず、このレンタカー利用者の内で、「道の駅」の訪問した人は22%にとどまっている。しかも、「道の駅」の存在すら知らない人が半数にものぼっている。さらには、レンタカーを利用しない訪日観光客の内、「道の駅」を訪問した人は1割を切っているのである(図1)。

一方で、「道の駅」の訪問経験がある訪日旅行者の満足度は、7割と高い傾向にある。

図1 「道の駅」の認知度と利用率
(資料:観光庁)

「おもてなし」とは

2018年の訪日外国人旅行者が3,000万人を超えた。このまま順調に増加すれば、東京オリンピックが開催される2020年には、目標である4,000万人が達成できるのではなかろうか。

2020年オリンピック・パラリンピックが東京で開催されることが決まったのは、2013年のことであった。この時に話題になった言葉に、「おもてなし」がある。「おもてなし」は、話題となり、流行語大賞にもなった。その「おもてなし」の話題から早6年、来年は「2020東京オリンピック」の年となる。

政府では、「観光先進国」を目指した政策を推進している。「2020東京オリンピック」も見据え、世界が訪れたくなる観光先進国の形成である。日本における観光先進国の視点は、「観光資源の魅力を極め、 地方創生の礎に」、「観光産業を革新し、国際競争力を高め、我が国の基幹産業に」、「すべての旅行者が、ストレスなく 快適に観光を満喫できる環境に」の3つである。

3つの視点の中で、筆者が着目したのは、「すべての旅行者が、ストレスなく 快適に観光を満喫できる環境に」である。理由は、我々国民は日本を訪れる外国人に対して、「お・も・て・な・し」の気持ちで迎え入れているのだろうか、という疑問を抱いたからである。

政府が毎年実施している世論調査の中に、「外交に関する世論調査」がある。調査では、アメリカ、中国、韓国、オーストラリア、ロシア、中東諸国などに対して、「親しみを感じるか」と聞いている。回答を見ると、アメリカやオーストラリアは高いが、その他の国に対しては低い傾向にある。特に、中国、中東諸国、ロシアは低い(図2)。

※注:図は上位7位迄


   

図2 親近感がある国
(資料:内閣府「外交に関する世論調査(平成30年度)」より作成)

訪日観光客数・旅行消費額

筆者は中国において、観光関連の調査(2018年)を行ったことがある。その調査の中で気になったことに、「日本の地方に行くと、中国人観光客は敬遠される」、「商店に入ると、店員は黙って店の奥に入ってしまう」、などの意見が複数あった点である。

最近の国別訪日観光客の上位3位は、中国、韓国、台湾である。また、観光消費額の国別上位3位は、中国、台湾、韓国である。中でも、中国からの訪日客は830万人、観光消費額は15,450億円(2018年)となっており、観光消費額は2位以下を大きく離している。

ひところの中国人観光客の爆買いは少なくなったとはいえ、未だに旅行消費額に大きな影響を与えている国は中国である。前述したように、訪日観光客に対して国民は親近感を抱く国がある一方で、そうではない国がある。

国策としてインバウンドが推進され、訪日観光客数・旅行消費額は目標値を達成している。だが、急激に増加している訪日観光客数に対して、受け入れ側の国民はついていけているのだろうか。

2020東京オリンピック・パラリンピックと「道の駅」

1964年東京オリンピックのテーマソングとして、「東京五輪」を歌ったのが三波春夫である。当時の三波春夫は、国民の誰でもが知る有名な演歌歌手であった。そんな三波春夫が言った有名な言葉に、「お客様は神様です」がある。その言葉の意とは、「お金を払ってまで、歌を聞きに来てくれる人は、神様のようの存在だ」というのである。当時、この言葉は商売をやる人の“心がけ”になったほどであった。

あれから50年、来年は「2020東京オリンピック・パラリンピック」の年となる。この間に、日本は世界第二位の経済大国にまで登りつめたが、その地位はサステイナブルではなかったようだ。かつて日本の産業構造を支えたのは製造業であったが、グローバル化の進展の中で転換期にある。こうした中で国が目指しているは、「観光産業を革新し、国際競争力を高め、我が国の基幹産業に(「明日の日本を支える観光ビジョン」)」、である。

地方創生における「まち・ひと・しごと創生総合戦略」開始から5年目、2019年は第1期の総仕上げの年である。日本において2回目の開催となる、「2020東京オリンピック・パラリンピック」年となる2020年度から、次のステージに向けた新たな政策が開始される。

こうした状況を契機に、「道の駅」側も訪日観光客をいかにして迎えるのか、「おもてなし」とはどのようなことか、地域住民とともに考えなければならない時期に来ているのかもしれない。

2019.05.09