第6回企業研究会を開催しました

著者
大正大学地域構想研究所 教授
塚崎裕子

平成31年3月13日(水)、地域構想研究所では、地域創生にご関心のある企業にお集まりいただき、「企業と地方自治体による地域創生の可能性についての共創研究-新しい暮らし方・働き方を求めてー」(通称「プロジェクトつなぐ」)の第6回の企業研究会を開催しました。

研究所の研究事業の一つである「プロジェクトつなぐ」では、研究所が首都圏企業と当研究所が連携している地方自治体をつなぎ、企業と地方自治体との連携協働による地域創生の可能性について研究するとともに、研究の中から企業と地方自治体との連携協働による地域創生の取組を社会実装することを目指しています。

佐渡市の現状・課題、企業との連携の可能性等について

初めに、佐渡市副市長の藤木氏より、①現在、佐渡市は人口減少、高齢化、観光客減少等の問題を抱えているが、日本ジオパーク、佐渡金銀山、世界農業遺産等、佐渡の価値といえる大きな遺産・プロジェクトを柱として、佐渡の魅力を発信し、反転攻勢をかけたいと思っていること、②金山を目指し、日本中から集まった多くの人たちを養うため、島の隅々まで米所となり、水田がトキのえさ場になり、トキが生息しやすい環境を作るため農薬除草剤を使わない安心安全な農業を進め、認証米制度ができ、そうした自然との共生の中で産業が成り立っていることから、先進国初の世界農業遺産に認定されるなど、これらの事象は相互に関連していること、③佐渡は美しい自然に恵まれているだけでなく、今でも30を超える能舞台が残るなど歴史文化が豊かであることについてお話がありました。

《新潟県佐渡市 副市長 藤木則夫氏》

 
次に、佐渡市企画課の松本氏より、①佐渡市の人口は毎年約1000人減り続けており、うち7割が自然減、3割が社会減であり、65歳以上の割合が約41%と高齢化が進行していること、②外国人観光客は新潟―台湾の直行便などで増加傾向にあるものの、観光客数全体は減少に歯止めがかかっていないこと、③佐渡市将来ビジョンの下、地方創生交付金を活用し、産業強化や地域活性化により人口減少対策を進めてきており、平成31年の目標のうち、平均宿泊数、外国人観光客数、若者定住支援数は達成しつつあるが、出生数はどんどん減少しており、昨年度284人と目標達成が困難な状況にあること等、佐渡市の現状や課題についてご紹介がありました。

佐渡市地域振興課の鍵谷氏より、①UIサポートセンター設置、お試し住宅の活用、姉妹都市交流やさどまる倶楽部会員制度等により、移住交流の推進を図っているが、佐渡市は離島であることや若者の働く場が充実していないこと等難しい面もあり、サテライトオフィスや企業誘致等、企業との連携により移住を促進できないかと考えていること、②佐渡市のふるさと納税の返礼品には佐渡産コシヒカリ認証米、佐渡乳業のバター等があるが、佐渡産品についてはブランド化に至っておらず、首都圏企業と連携したコラボ商品の開発ができればと考えていること、③佐渡には大学や短期大学がなく、就職先の情報が少ないこと等から、島内の就職は減少傾向にあり、企業PR動画作成支援やキャリア教育、キャリアアップ支援事業、在宅ワークの推進などのサポートを行っていること、④異業種交流の一環として、島内事業者のネットワークや知恵を活かした商品開発に取り組むプロジェクトである「さどまるごとネットワーク」では、今年度は食をテーマとして、鬼太鼓と金を基軸に3月までに試作品を作成し、今後はテストマーケティング、プロモーション、商品化、実践へと展開する予定であること、⑤首都圏の企業との連携の事例として、ルミネと連携して、昨年度「旅ルミネ」と題してフード&マーケットやトークショー&ワークショップを新宿で開催し、来場者数が目標の3倍になるなど大きな成果を収めたこと等、企業連携につながる可能性に関してご紹介がありました。

佐渡市副市長の藤木氏より、現在も大正大学を含め30ぐらいの大学に佐渡のフィールドを実習やクラブ活動等で活用してもらっているが、例えば会社に出勤できなくなった人に佐渡に来てもらい、懐深い自然文化の中で農業や漁業を手伝ってもらい、少しずつ元気になって帰ってもらう、或いは佐渡のサテライトオフィスで勤務して、都市部での1年分の通勤時間に当たる1ヶ月間を自分の自由な時間として満喫してもらう、そういった形で企業と連携した佐渡の活かし方があるのではないかと考えているとのお話がありました。

テレワークを活用した地方移住の可能性 -内田洋行と静岡市の連携のお取組について-

静岡市役所企画局次長の前田氏から、①静岡市は政令指定都市の中で人口が最少であり、1990年をピークに人口減少に転じており、首都圏に対する転出超過を主因に社会減の状況にあること、②ふるさと回帰支援センターの中に「静岡市移住支援センター」を市町村単位では唯一設置したことにより、他自治体の取組に関する情報収集やその取組の静岡市への展開、移住を検討している方のリアルな悩みの把握ができたこと、③「仕事」と「住まい」という移住実現のネックとなっている課題については、テレワークが十分普及すれば、「仕事はそのまま、住まいは静岡市」というライフスタイルを確立し、移住促進につなげることができるのではないかとの仮説を立てたこと、④ネットワンシステムズに協力してもらい、3週間にわたる実証実験を行ったところ、同社から「通常業務は実現可能」であることや「静岡市は、交通、生活環境、文化の面で他の地方都市に比べ優位性がある」との被験者意見のとりまとめが報告されたこと、⑤静岡市は「首都圏と簡単に行き来」でき、「豊かな自然」に恵まれ、大正大学地域構想研究所の「企業支援による地方移住に関する調査」で明らかになった都市企業に勤務する移住希望者のニーズに適っていると考えられることから、「お試しテレワーク」という新規事業を立案したこと、⑥つなぐプロジェクトをきっかけに内田洋行と「地方創生に向けた包括連携協定」を締結し、同社の新人研修を静岡市で実施するというテレワークの実証実験を行った結果、参加者の移住への関心を高めるなど、テレワーク移住の可能性について手応えを感じたこと、⑦中小企業でテレワークに取り組み、成果を上げている2企業(石井事務機センター及び向陽電機土木)を対象に訪問調査を行ったところ、従業員目線からスタートしたテレワークにより、両社は従業員の満足、生産性の向上、人員確保といった経営課題をクリアしていると感じたこと等について、ご報告があり、最後に実証実験が十分でないと考えているので、関心がある企業に「お試しテレワーク」を是非ご活用いただきたいとの呼びかけがありました。

《静岡県静岡市役所 企画局次長(当時) 前田誠彦氏》

 
企業研究会に参加いただいていたネットワンシステムズや内田洋行の方々から、「静岡市に貴重な機会をいただいた」、「移住してもいいと思うようになった人が出てきた」、「行ってよかったという意見がとても多かった」等のご発言がありました。

リモートワークに関する調査について

地域構想研究所教授の塚崎裕子より、昨年10月に研究所が実施した「リモートワークに関する調査」について、①地方圏の大学生をリモートワーク正社員としての首都圏の企業が採用することは地方からの人口流出を防ぐなど大きな可能性を秘めていると考えており、地方圏(三大都市圏と政令指定都市がある県を除いた28県)に住む大学生(大学院生を含む)を対象にリモートワーク正社員としての採用への関心等についてインターネット調査を実施し、833人から回答をいただいたこと、②首都圏企業に「リモートワーク正社員」として採用されることについて、「非常に関心がある」と「少し関心がある」を加えると 59.5%と約 6 割となったこと、③「リモートワーク正社員」に関心があるとする理由を訊いたところ、「出身地に住みたいと思うから」(47.7%)が最多で、「現居住地に住み続けたいと思うから」(28.5%)が続き、現居住地或いは出身地に住みたいと思っている者に、「住みたいと思っている理由を聞いたところ、「故郷なので住み続けたい」が49.5%と半数近くで最も多かったこと、④「リモートワーク正社員」に関心がある者が、リモートワークをする場合に必要と考える条件は、「テレビ会議などができるような IT 環境の整備」が 69.9%で最多となり、「会社と疎遠にならないよう社内の様々な情報の提供」(66.7%)、「サテライトオフィスの整備」(58.0%)が続いたこと、⑤「リモートワーク正社員」に関心がある者がリモートワークをする場合に心配なことは、「仕事で困ったことがあったとき相談できないのではないか」(66.7%)が最多で、次いで「職場で仲間を作ることができないのではないか」(45.9%)との回答が多かったこと等を報告しました。

《地域構想研究所 教授 塚崎裕子》

 
終わりの挨拶として、地域構想研究所教授の金子順一から、本日の研究会のキーワードといえる「テレワーク」の活用可能性は、仕事の複雑化・高度化やICT技術の進歩等に伴い、あらゆる仕事において今後広がり、テレワークを活用して地方に人を呼び込むことも増えるだろうし、地方の優秀な人材を確保するために都市部企業がリモートワーク正社員といったリクルートの方法を使うことも夢ではなくなる時代が来るだろうとの話がありました。

その後、参加者同士の意見交換や情報交換も活発に行われ、盛況のうちに研究会を終えることができました。

2019.03.29