わざわざ足を運びたくなる、地域らしい拠点とは

著者
大正大学地域構想研究所研究員
山本祐子

「道の駅」の継続可能性と地域活性化の拠点形成

農水産物の収穫期や行楽シーズンになると、「道の駅」が話題にとりあげられることが多い。その話題の中心として、地域の特産物の販売やご当地ならではのイベント企画がある。地場産の農水産物が豊富に取り揃えられた店内が地域の内外の客で賑わう光景は、これまでの「道の駅」の理想モデルであろう。だが、現在、この理想モデルが継続できなくなっているという現状も指摘されている。

「道の駅」は25年ほど前に103か所からスタートし、この理想モデルを目標に1,145か所(2018年4月現在)にまで増えている。実のところ、「道の駅」において農水産物を販売しなければならない、という決まりはない。しかし、実質的に「道の駅」の利用客の目的の多くが農水産物の購入であることから、新鮮な農水産物やそれらを活用した飲食メニューの販売によって賑わいの場が生まれている。もちろん「道の駅」の機能はこれだけではないが、この農水産物の販売なしには、客を満足させることができない。それほど、この理想モデルが定着していると言える。

しかし近年では、農水産物の販売店舗としての役割以外に、地域活性化の拠点として「道の駅」を活用する流れが進行中である。この拠点形成が本格化したのは、平成26年にスタートアップした地方創生からであるが、「道の駅」の中には、その前から地域活性化の拠点としての「道の駅」のモデルを確立させ、既に地域の産業や観光の拠点となっている箇所がある。拠点化を成し遂げている箇所は、なにも初めから地域の拠点であったわけではない。日々のたゆまぬ努力と戦略により、「道の駅」の中で築きあげたものである。この賑わいと活気のある「道の駅」が国の目に止まったことから、「道の駅」を地域活性化の拠点の形成に活用しよう、ということになったわけである。

それでもやはり賑わいがある箇所では農水産物の販売をはじめとする「道の駅」の理想モデルでもあるケースが多い。では、そのような理想モデルが継続できなくなっている箇所では、どのような事業・活動によって「道の駅」を継続し、拠点を形成しようとしているのだろうか。

農業問題と新たな戦略

ここで、「道の駅」の理想モデルの継続を困難にしている要因でもある日本の農業問題に触れておきたい。

我が国の農業構造の特徴として、従事者の世代間のバランスが悪いことがある。基幹的農業従事者を見ると、最多階層は「70歳以上」であり、次いで「60歳から69歳」である。基幹的農業従事者の60%以上が高齢者であり、30歳以下の若年層はわずか5%にすぎない(図1)。「道の駅」に出荷する生産者の年齢層も60歳代、70歳以上が多い。このことを考えると、10年後には現在のような農水産を売りにする理想モデルが継続できなくなる可能性がさらに増すと推察される。

図1 年齢階層別基幹的農業従事者数(平成29年概数値)
資料:農林水産省(2018)

 

こうした問題の解決に向けて、新たに始まっている戦略を見ていくことにする。

1つ目が、地場産の広域化である。一般的に地場産とは、「その地域(=市町村)で生産されたもの」を指す。これを、近隣の自治体や県内まで範囲を広げて「地場産」とし、集荷し販売・加工するという戦略である。しかし、地場産を広げた際に、近隣の「道の駅」と農水産物集荷の競合が起こらないのか、ということが疑問として浮かぶ。そこで、広域から農水産物を調達している「道の駅」の駅長に聞いてみたところ、「地域の課題はお互いに理解しているので、問題にはならない」とのことであった。確かに、農水産物の生産者の立場になれば、どの地域に出荷するのかよりも、高値で取引ができるか否かの方が重要なのだろう。

このことに関しては、店舗内中心の販売から都会での外商へと販売の範囲を転換することで、よりその傾向が強まると言える。「道の駅」の関係者の話によれば、来店する客は地元の特産物を求めるが、外商の客は地元ではなく、その「道の駅」がある「県」で捉える場合が多い、という。したがって、客の商品に対する意識は市町村ではなく、県単位で捉えているようだ。このような外商化は、2つ目の戦略とも言えるだろう。外商戦略は都市部の進出に留まらず、海外にまでおよぶ「道の駅」が出現している。こうなると、地場産の概念は日本産ということまでに広がる。

3つ目が、観光先進国実現に向けた観光基盤の強化づくりである。これまでの限定されたインバウンド観光地域から、いかにして地方の市町村にまで観光客の足を運ばせるかを考え、多様化するニーズへの対応がはじまっている。つまり、地域のゲートウェイとしての「道の駅」の機能の強化である。地方創生以降には、駐車場の拡大や店舗改装が増えている。また、隣接地における新たな施設建設も始まっている。そのひとつの例に、現在、自治体、積水ハウス(株)、マリオット・インターナショナルが連携して建設を行う『地方創生事業「Trip Base 道の駅プロジェクト」』と称したロードサイド型ホテルがある。これは、「道の駅」の隣接地にホテルを建設し、新しい体験型の旅のスタイルを提案していこうというものである。ファーストステージとして、5府県15個所(1,000室)が2020年以降に開業する予定である(表1)。

 

注:今後の協議等により変更となる可能性がある。
資料:積水ハウス

地域振興における新たな創造

「道の駅」では、これまでの活性化事業が通用しなくなっても、いかにして代替となる事業を展開して「道の駅」を継続させるかが大きな課題となる。つまり、「道の駅」に求められるレジリエンス(Resilience)の問題である。前述した新たな事業展開には、これまでにあたりまえであった価値観からの脱出という共通項がある。そもそも、「道の駅」の目的とは、「道路利用者への安全で快適な道路交通環境の提供、 地域の振興に寄与(国土交通省)」することである。であるならば、地域の特徴が異なる中で、地域振興の形が似通っていたことの方が不自然にも思えてくる。

最近の「道の駅」は、利用者のニーズに応えた新たなサービスを行うようにはなってきているが、地域らしさという特徴に欠ける箇所が多い。その地域ならではの特徴を活かした拠点形成ができれば、立ち寄り休憩施設からわざわざ足を運びたくなる場所に変化するだろう。

2019.02.28