効果的なKOLプロモーションの使い方とは

著者
大正大学地域構想研究所研究員
李崗

観光地のマーケティング活動とは、地域の提供できる価値と、それを受け入れてくれそうなターゲットをマッチングさせることとも言えよう。その際、自地域の真の価値とは何かを追求することは大事だが、一方潜在顧客側のニーズや、観光行動の特徴、さらには社会文化的背景を把握する必要もある。近年、訪日中国人観光客の急速な増加が周知の通りだ。中国人観光客といえば、マスツーリズムや「爆買い」といったイメージが強いが、近年観光行動に著しい変化が生じているようだ。1月11日(金)に本学で開催された日本版DMOセミナーにおいて、LIAN株式会社の楚社長に中国人観光客向けのマーケティングについてご講演いただいた。今回は、その内容をピックアップして紹介させていただきたい。

年代別のマーケティング、「70後」「00後」のニーズの違いとは

楚社長の話しによれば、中国人観光客の観光行動は、年代別に大きな違いが見られるという。改革開放の実施前後の1970年代、改革の試行錯誤がなされた1980年代とその成果が現れ始めた1990年代、急速な成長を見せた2000年代、それぞれの時代に生まれた彼/彼女らは、現在訪日観光客の主力になっているが、それぞれ特徴を持っている。「70後(1970年代生まれの略称)」は比較的安心できる団体旅行を好み、東京や富士山、京都、大阪など、日本を代表する都市や観光地を経由するコース、いわゆるゴールデンルートで日本を楽しむ傾向にある。それとは対照的なのは、「00後(2000年代以降生まれの略称)」である。「00後」は、自己主張が強く情報探索に熟練しているため、有名観光地より地方の観光地に足を運び、地域に根付いた食や文化を探しだし、「自分しかできない」旅行経験を求める人が多い。爆買いを通して経済的豊かさを顕示するより、「00後」は地域独自の文化を体験しながら自分の教養をも見せたいという意欲が強い。20歳になろうとする「00後」の人たちは、アニメや漫画といった日本のポピュラーカルチャーのファンが多く、リピーターになる可能性が高い。また、スマートフォンやキャシュレスの生活に慣れた彼/彼女らには、wi-fiが必要不可欠なものである。旅行前の観光地情報検索や各種予約、旅行中のリアルタイムでの情報発信やショッピングと決済、旅行後の旅行経験のシェア、旅行全過程を通して紙媒体を一切使わず全てネットで解決する。さらに、各施設のホームページより友達と旅行サイトの経験談や口コミを信用するという。

今年度日本観光庁が発表した平成29年度の「宿泊旅行統計調査」の結果によると、インバウンド観光客の観光行動には「団体旅行から個人旅行へ」と「都市部から地方部へ」と、この二つの傾向が見られるという。しかし、観光市場の細分化が進む現在、今後訪日の主力になる若年層向けの観光戦略を考える際、一概に「中国人観光客」としてではなく、年代別や性別など観光客の特徴を分析する必要があると思われる。

効果的なKOL(Key Opinion Leader)プロモーション

中国人向けのマーケティング手法に、KOL(Key Opinion Leader)を起用するプロモーションが効果的であるという。このプロモーション手法は、もともと医薬業界で用いられたもので、医薬品メーカーが自社製品の普及・浸透を図るため、影響力を持つ医師に自社のアピールを依頼することを指す。現在、旅行業を含め多様な業界で使われるようになった。SNSやブログなどで周囲に影響を与える人物(インフルエンサー)に、特定の観光地や施設の商品やサービスの体験談を好意的に発信してもらうことである。いうまでもなく、その背景にインターネット環境の整備とSNS媒体の普及がある。

中国では、Weibo(「微博」)とWechat(「微信」)という二つのSNS媒体を使用するのが一般的である。2018年の日間アクティブユーザー数はそれぞれ4.46億人、10.4億人を超えているという。中国におけるKOL産業の市場規模が2020年に1120億元に達すると見込まれる。また、KOLは販売型KOLと情報型KOLに分けられ、前者は商品販売のため、後者は情報提供や知名度拡大のために宣伝を行う。楚社長の講演では、インバウンド対応の事例として、大丸心斎橋店の化粧品の宣伝活動が挙げられた。大丸心斎橋店は、在日中国人のKOLを化粧品体験イベントに招聘し、ファンたちとの美容経験に関する意見交換とリアルタイムでの情報発信を依頼した。OfflineイベントとOnlineの情報発信を融合したプロモーションの典型例であった。説得力があり、密度の高い情報を発信できるという利点がある。

このように、インバウンド観光対応においては変動する市場の消費行動を科学的な調査手法を用いて継続的に把握し、その結果に基づいて従来のマーケティング手法にとらわれることなく、KOLといった新たな手法の導入が必要になってきたことが垣間見られる。地域の柔軟性と人材力が問われるものだ。

2019.01.31