外部人材活用の必要性と課題

著者
大正大学地域構想研究所研究員
李崗

着地型観光に期待される外部人材の活躍

地域に眠られている地域資源を掘り起こし、それを観光資源として外部から訪れて来た観光客に提示する、このような「宝探し」活動は、着地型観光に着手しようとする、あるいは地域の観光のレベルアップにチャレンジしようとする地域でよく使われる手法だ。その際、観光商品造成準備段階での地域資源調査と磨き上げ、商品造成におけるコンセプル設定や価値づけ、旅行中での地域ガイドの担当、さらには旅行後の満足度調査など、地域住民には観光の全過程において主体的な活動が期待される。

一方、外部者目線の重要性もしばしば強調される。日常生活で地域に慣れ親しんだ地域住民には気づかない魅力を、外部者を介して発見するということだ。ここでいう外部者とは、観光者や外部の観光業者、大学生はもとより、都市住民、地域おこし協力隊、外国人、Uターン者なども含まれ、幅が広い。イギリスの観光社会学者・ジョン・アーリが、観光という移動を伴う人間行為が基本的に「差異」に基づくと述べている。外部者目線を導入することは、観光地に向けられる観光者の一方的な「観光のまなざし」の構造を観光地側が逆手に取り、観光者の眼差しを利用し「差異」の生産に寄与することを意味する。このような外部者によって地域の素晴らしさが発見され評価されることは、単に地域の観光推進に貢献するだけでなく、地域住民の誇りの涵養にもつながるとされる。

多様な外部者の中には、観光市場の動向と潜在的観光客のニーズを把握でき、地域に密着した活動を多様なファクターとの連携で進める外部人材が地域にとって特に貴重だ。特に着地型観光の場合、観光商品の造成から観光客の送り出しまで都市にある旅行会社に依存するという、従来の観光産業の構造から脱皮するのを目論むものだ。それを達成させるには、前述のように地域住民が地域内部の立場から観光事業への積極的な関与が必要だが、さらに重要なのは、外部の旅行会社の代わりに地域でランドオペレーターとして機能し、観光市場と観光地をつなぐ中間人材の存在だ。これから観光事業を始める地域、あるいは着地型観光へ観光形態の転換を図る従来の観光地にとって、このような人材の保有と育成が喫緊の課題になると思われる。事実、現在観光地域づくりを推進している地域では、外部人材の起用の必要性が共通の認識になり、積極的な採用と活用が一般的になりつつある。

地域住民との関係性が大事

しかしながら、地域住民が主体となって展開すべき観光地域づくりの場に外部者を取り入れるのは、決して簡単なことではない。そこに地域コミュニティの柔軟性と包容力が問われる。地域住民は、外部者を自分の日常生活に影響をもたらし変動を引き起こすかもしれない不安定な存在として見なし、いずれは地域を離れ最終的責任を取らないよそ者として捉えるという、ある種自己防衛的な考えを持つことは自然なことであろう。外部者側から見れば、地域コミュニティに受け入れられるまで地域内の利害関係を懸念し発言や行動を控え、地域社会から意図的に距離を置くことも考えられる。あるいは、地域の事情を考慮せず専門知識や異なる視点の提供といった自分に与えられたミッションを強引に行動に移し、結果的に計画が頓挫する恐れもある。

したがって、外部人材を導入すると地域が決めた以上、彼ら/彼女らが地域住民との関係を一から構築し地域に定着していくプロセスの中で、行政や観光地域づくり民間団体によるサポートが不可欠だ。一時的な滞在を前提とする観光客とは違って、地域に密着し観光まちづくり活動に携わる外部人材の場合、より長期間にわたって地域に滞在するため、より密に地域住民と接触する。そうすると、住民との間に日常生活のやりとりを通じて対面的関係を結ぶ可能性が潜まれる。日常生活に引きつけて「真摯」をもととする住民の観光者対応と同じ、今度は外部者が地域住民に対して「真摯」を持って信頼関係を築くことになる。この場合、やはりインバウンド観光客を受け入れる時と同様に、住民と外部者との間で互いに居心地のいい「コンダクト・ゾーン」の構築と維持が重要なポイントになると思われる。

多様なファクターによる合意形成は、日本版DMO登録の必須要件の一つである。着地型観光の展開を目指す地域にとって、外部人材をも観光地域づくりの有志として人間関係の「輪」の中に取り入れ、全体ビジョンの共有、役割の明確化、外部者の活躍の場の提供、意思疎通ツールの整理などが不可欠である。そのためには、外部者と住民の両方の不安を解消するための仕組み作りや両者の交流の場のセッティング、さらには人間関係形成のプロセスと経験の積み重ねを見守る日常的な努力が大事だ。

2018.11.29