地域が求める「道の駅」における地域振興のあり方とは

著者
大正大学地域構想研究所 客員教授
山本祐子

地域の生活関連施設の変容

昨今、少子・高齢化と人口減少が進行している過疎地域等では、日常生活を送るために必要なサービスが得られないという事態が発生している。

こうした地域で最初に課題となったのは、交通インフラの問題であった。公共交通(列車・バス)は利用者の減少にともない、運行回数が減少した。そしてさらなる利用者の減少から廃止となり、デマンド交通(電話予約など利用者のニーズに応じた運行)に切り替えられた。それでも、当時は飲食料品小売業の1軒や2軒は存在していた。

ところが、最近では飲食料品小売業すら消えていく地域が増加している。生活関連施設(飲食料品小売業、診療所など)がその地域で立ち行くには、一定数の人口規模が必要となる。国土交通省では、生活関連サービス施設へのアクセシビリティ分析を行っている。この調査によれば、移動距離が2km圏で食料品店やコンビニエンスストアが5~8割の確率で利用可能なのは、人口密度(メッシュの人口)が400~1,000人/㎢程度のメッシュに居住している住民である。つまり、これより人口密度の低い過疎地域等に居住している住民が、食料品店やコンビニエンスストアにアクセスしようとすれば、移動距離が長くなってしまうということである。

それでは、飲食料品小売店やコンビニエンスストアへのアクセスが厳しい地域では、どのような方法で生活インフラ問題に対処しているのだろうか。

資料:国土交通省「生活関連サービス施設の利用可能性」

 

「道の駅」の販売商品の変化

生活インフラ問題を解決するための施設のひとつが、「道の駅」である。「道の駅」では、主力となる販売商品を土産品から飲食料品や生活必需品に変えているのである。こうした動きは、当初は過疎地域にのみ見受けられる光景であったが、最近では多くの「道の駅」で同様の傾向にある。このことは、「道の駅」が立地している地域の多くで人口減少・高齢化が進行している、ということでもある。

さらに、「道の駅」の景観も変わりつつある。これまでの「道の駅」は、大きな建物に広大な駐車場というイメージが強かったが、最近では地域の事情に合わせた施設が登場するようになった。生活基盤やコミュニティが課題となっている地域では、役場の出張所、診療所、金融機関ATM、福祉施設などを併設・隣接する「道の駅」が見受けられるようになった。

かつての「道の駅」は、ドライブインや観光物産館の色彩が強かった。しかし、地域の人口減少・高齢化の進展に伴い、「道の駅」の役割が変化している。もともとは観光入れ込み客数に期待して建設された「道の駅」だが、地域の変化にともない異なる役割が求められるようになってきた。

一般的な「道の駅」の施設は、「簡易パーキング」と「地域振興施設」から構成されている。「道の駅」の地域振興施設は、「こうであるべきだ」という決まりはない。ただし、「道路利用者への安全で快適な道路交通環境の提供と地域の振興に寄与(国土交通省)」する事業・活動が求められている。つまり、道路交通環境の提供は普遍的に求められる役割であるが、一方の地域振興の形が地域の変化にともない変容してきている、といえるだろう。

「道の駅」での日用雑貨品の販売の様子

「道の駅」が地域振興施設であるための施策

土産品の販売から食料や生活インフラ商品販売への転換は、冬場の売上の低迷の課題解決策でもある。主な利用客が観光客だった際には、冬場の利用客の減少に苦しむことが多かった。しかし、利用客が地元や周辺住民になれば、彼らは年間を通して利用客となりうる。その際の販売品を、地元や周辺域住民のニーズに応えた販売商品に切り替えたということである。

となると、「道の駅」をスーパーに変えたのか、という指摘もあるだろう。ただのスーパーでは、「道の駅」が地域振興施設としての役割を果たせなくなる。そこで、多くの「道の駅」では、食材や惣菜を販売するにあたってスーパーマーケットとは一線を画した策を講じている。地元の食材にこだわった地産地消をモットーにしているのだ。

そろそろ、お節料理や年越し蕎麦が話題に上る時期である。この時期になると、お節料理や年越し蕎麦は日本産の食材を使ったものにしたい、という気持ちが頭をよぎる。近頃では、「主要原材料国産」というキャッチフレーズが目につく。それほど原材料を国産でつくることが難しくなっている、ということであろう。蕎麦もかつては多くの地域で生産されていた食材であるが、今では年越し蕎麦の原材料を国産で探すことが難しくなっている。高級品を売りにしてきたデパートですら、外国産の蕎麦粉の製品が増えている。

何気ない日常の食卓も、輸入食材なしには賄えなくなっている。農林水産省では、食卓にのぼるメニューの食料自給率(国内で消費する食料が国内生産によってどの程度賄えているかを表した割合)を概算している。さすがに米の自給率は高く100%、野菜も80%で高い傾向にある。しかし、その他はいずれも自給率が低い傾向にある。日本食の代表的なメニューである味噌汁を考えると、味噌の材料である大豆の自給率はわずか7%である。

資料:農林水産省

地場産を使った惣菜と弁当の販売

 

日本の食料自給率の低下を背景に、「道の駅」では地場産を売りにした地域振興を図っている。また、減少している農業従事者の育成に寄与する活動を行う「道の駅」も増えている。つまり、「道の駅」が行う地域振興の形は、地域の生活基盤づくりへと変容しているということである。

次回以降は、現在の「道の駅」による地方創生拠点の形成について掲載していく。全国で登録されている「道の駅」は1,145駅であるが、それぞれの駅では地域の情勢を考慮し、さまざまな拠点化を目指している。

2018.11.28