継続雇用年齢引き上げに併せ、セカンドキャリア支援の強化を

著者
大正大学地域構想研究所教授
金子順一

継続雇用年齢引き上げは有力な政策だが、一律の引き上げは難しい

人口減少、少子高齢化の進行で、人手不足が深刻だ。政府は、外国人労働者の受け入れ拡大を急ぐとともに、高齢者の更なる就業促進に取り組む方針である。

10月に開かれた、政府の「未来投資会議」(議長は安倍首相)。“全世代型社会保障”への移行に先立ち、高齢者の雇用拡大のため新たな対策を打つ方針が確認された。現在65歳とされる継続雇用年齢を70歳に引き上げることが想定されているという。高齢化の更なる進行の下、社会保障の担い手を厚くし、同時に高齢者の活躍で深刻な人手不足に対応する狙いがある。

60歳定年制を定める高年齢者雇用安定法は、65歳までの雇用確保措置を企業に義務付ける。雇用確保措置は、定年年齢引き上げ、定年制の廃止を含むが、多くの企業が採用するのは継続雇用制度。原則として希望する社員全員を対象とする必要があり、定年後の雇用保障という意味合いが強い。働き手にとっては、定年後も確実に仕事が用意されている安心感は大きいが、雇用する企業にとっては負担感もある。

だが足下は、深刻な人手不足である。特に、労働集約的な産業、あるいは技術・技能が要求される雇用分野では、社員採用が難しくなっている。こうした企業では、継続雇用年齢の引き上げは、人材確保につながるメリットが大きい。国による支援措置とパッケージにすれば、高齢者の就業促進を図る上で、有力な政策選択肢になるだろう。

ただ継続雇用制度は、満足のいく雇用を常に保障するものではない。ふさわしい仕事が当該企業にあるとは限らない。働き手の処遇面での不満もしばしば耳にする。そして、70歳を超えて働き続けることも難しい。働き手にとってメリットが大きいのは確かだが、当然のことながら万能な対策とはなりえない。一企業で長く働くしくみだけでは対策として限界がある。

また、継続雇用年齢引き上げは、希望者全員対象の雇用保障が強い形では、その実現は難しいだろう。対象者は選びたい、これが企業の本音ではないか。特に、長期雇用中心の大企業では、一定年齢への到達という簡明な要件で雇用が終了できる制度は、人事管理上、なくてはならないものだ。

社員の主体的キャリア形成を重視し、多様なセカンドキャリア支援を

そこで、継続雇用年齢引き上げに併せ、転身を希望する社員への支援強化にも取り組みたい。年齢を気にせず働ける第二の職業人生に挑戦する社員に対し、定年の相当前の段階(例えば40~50歳)から、本人の希望を前提に、再就職、起業、地方移住などを企業が支援するのである。特に長期雇用が定着している大企業では、こうしたセカンドキャリア支援の意義は大きい。

この種の支援に関しては、退職金の割増、関連会社への転籍・出向、再就職支援、独立開業支援などの制度を、既に有している企業も多いが、いずれも、退職時ないしは退職を間近に控えた段階での措置が中心である。

しかし、充実のセカンドキャリア実現には、退職間際だけでなく、職業生活のもっと早い段階から、第二、第三の職業人生に備える必要がある。定年後の就労期間が確実に伸びる人生100年時代。一企業での職業キャリアだけでは終わらない。複数のキャリアを持つことが普通の時代になっているのである。

セカンドキャリア支援の実効を上げるためには、社員の主体的・自律的キャリアを重視した人材活用システムへの転換が前提になる。これまで、長期雇用慣行の下で、企業から与えられたキャリアに偏りがちだった実態を、社員が将来の職業人生を展望しながら、主体的・自律的にキャリアを積み上げる、そうした働き方への転換である。ステージの節目節目で、自らのキャリアを棚卸しし、問い直す。自己啓発で足らざる部分を補い、同時に企業に対し、業務配置、研修機会などの希望を提示しつつ、主体的にキャリアを形成していくのである。

企業の対応としては、社員がキャリア形成について学べる機会を設定し、キャリアコンサルティングを通じて継続的に社員をサポートすることが基本となる。そして、希望するセカンドキャリア実現に向け、社内公募制、兼業・副業の容認、体験的就業である“社会人インターンシップ”など、キャリアの幅を広げる機会を提供し、社員の期待に応えていくことが考えられる。

このほかにも、定年後のキャリアに具体的につながる長期の教育訓練機会の提供とその間の特別休暇の付与も有効だろう。また、定年前から中小企業、他産業に在籍出向させ、その経営環境に慣れてもらうなどの人事上の配慮も考えられる。挑戦する社員のニーズを踏まえ、多様な支援措置を用意することが大切である。

2018.10.29